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開花と手入れ


 ビオラ・パンジーは元々、原種の性質を受け継いで、春になり昼間の時間が長くなると開花する長日植物でした。19世紀末のヒエマリス系の出現以降、多くのものが開花に長日を必要としないものとなりました。ですから今流通している、大多数のビオラ・パンジーは夏に播種すれば年内に開花させることができます。でもヨーロッパ系の品種には長日性のものもありますので、それが自然に開花するのは春になります。このような品種は、秋(寒冷地では春)に蒔くようにします。

 近年、ビオラ・パンジーの出荷が早まり、秋早くには開花株が店頭に並ぶようになりました。でも、もし冬から春の花を期待するのであれば、気温の高い時期に開花してしまったものは、なるべく避けましょう。ビオラ・パンジーは、ある程度株が育ち、温度と十分な光があれば、どんどん成長し開花を続けます。開花した茎は、条件が悪くならない限り、新しく成長した葉腋に必ず蕾を着けるようになります。このとき、温度、特に夜間の気温が高いと、節間(葉と葉の間隔)が長くなってしまいます。ですから、気温の高い時期に開花してしまった株は、時間が経つと、とても草姿が悪くなります。また、徒長してしまった株は、寒さに極端に弱くなってしまいますから早く植えても冬に良い花を見ることは難しくなってしまうのです。
 ですから秋の花を楽しむと割り切るのでなければ、、早く花を見ようと無理な早蒔きをしたり、まだ気温の高い時期に開花してしまった株を手に入れることは、なるべく避けるようにしましょう。秋は夜間の気温が10℃近くまで下がるようになってからでしたら、開花株も徒長してしまうこともないので、安心です。


 長日性がなくなったといっても、冬に十分な開花を望むのはなかなか難しいことです。気温が低く、昼間十分に地温が上がらなければ、殆ど成長しないため良い花は見られません。でも寒冷地や積雪地帯では無理ですが、ちょっとした工夫をすることで、冬でも十分に花を楽しむことが出来ます。ビオラ・パンジーの原種の自生地は、主にユーラシア大陸の寒冷地や高山帯の裸地や明るい草原です。ですから開花する春でも、夜間は凍結することもよくあります。でも、日照は十分にありますので地表近くで育つため、昼間は十分に温度が上がるのです。
 こんな条件を作ってやることで、冬でも十分に開花するのです。まず大切なのは、十分な日照を確保することです。そして昼間の温度を、15℃くらいまで上げてやります。簡単には、家の南側の日だまりで風を避けてやるくらいでも多少は効果がありますが、積極的には、昼間家の中の日の当たる窓辺に置いたり、フレームや穴あきトンネルを使います。しかし、前に書いたように夜間の気温が高いと徒長してしまいますから、くれぐれも暖房した室内には置かないよう注意しましょう。関東以南の太平洋側では特に保温したりしなくても、これだけで十分開花します。夜間に凍結しても、全く問題ありません。ただ、霜にあたりますと、花が傷みます。また、元来が長日植物ですから、夜間の照明はとても有効で、夕方数時間外灯の下などに置くと、開花も促進されます。


 開花し始めてから最も大切な手入れは、花がら摘みです。萎れた花は見苦しいこともありますが、枯れた花弁を放っておくと一番の病害、灰色カビ病(ボトリチス)が発生しやすくなります。また、結実すると養分をそちらに奪われますので、次第に花も小さくなってしまいます。咲き終わった花茎は先を持って、葉柄に対して直角に真下に押し下げることで、元からきれいに取り去ることが出来ます。これをこまめにすることが、長く良い花を見るコツです。この時、株の中の葉が黄色く変色しているようでしたら、一緒に取り除きます。また、葉の観察は肥料をやる目安になったり、容易にアブラムシなどの害虫や病気の症状を見つけることが出来ますから、是非心がけて下さい。